一般社団法人日本スパ協会(JSPA)は、日本におけるスパの理念を明確にし、その普及と啓蒙を目的とし、会員及び業界の発展に寄与することを目的とした団体です。
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スパについて|一般社団法人日本スパ協会
スパについて
現在、急成長産業として「スパ」が注目を集めており、巷に「スパ」という言葉が氾濫し、サロンや店舗も急増しています。
その様な現状の中でも「スパとはいったい何なのか」と質問される機会は未だに多々あります。
スパという言葉は良く耳にするものの「スパは何を提供するところなのか」「どのような設備があるのか」「温泉がなくてはスパなのか」「トリートメントって」などスパに関する様々な疑問が人々の中にはあり、スパとは何なのかが明確に掴めないでいる状況なのです。
それは、我が国ではスパの定義が定着せず、曖昧な視覚的なイメージが先行している事に起因していると思われます。
例えば、そのイメージはエステティックサロンや温泉や温浴施設であり、更にはリゾート地や高級シティホテルで優雅にくつろぐ女性のイメージなどです。
この様なイメージが交錯し、スパをイメージでとらえる流れができ、スパとはいったい何なのかが不明確になっています。

スパ(SPA)は語源学的に大別すると、3つの意味があります。
1つめは「温泉、温泉地」、2つめは「温泉、鉱泉を利用した治療を提供する保養施設」、そして3つめが現在世界各地で急速に市場を拡大させている新たなスタイルのスパといえる「スパ・ムーブメント」であり、「スパってなに」という疑問が指すスパとは、このスパ・ムーブメントなのです。
スパ・ムーブメント
スパ・ムーブメントの歴史は浅く、1991年に米国で形作られたとされています。
当時の米国において様々な要因が絡み合い、国際スパ協会(ISPA)の設立を機に、今日の新しいスタイルのスパが誕生したのです。
もちろんモダンスパは、ローマンバスに代表される西欧の伝統的なスパの文化を継承しています。
米国においても温泉・鉱泉等を利用した水治療を提供する施設を西欧風に「クア」と呼び、多くの人親しまれていました。
しかしながら、西欧のクアハウス、テルメに代表される温泉文化、水治療の文化と現代のスパとを比較すると根幹を成す概念が異なるように思えます。

では、なぜ20世紀末の米国において新しいスタイルのスパが生まれたのでしょうか。
その歴史的な背景を簡単に紹介します。
18世紀から19世紀末にかけて西欧から様々な自然医学(アロパシー医学=現代西洋医学に対抗する全人的な治療を主とする医学)が新天地アメリカを目指して渡ってきました。
オステオパシー、カイロプラクティック、ナチュロパシーなどこれらの新興医学に共通したことは、アロパシー医学に疑問を持ち、「薬物に頼らない」「患者の症状(部分)だけでなくその全てを観察する」「人には本来、自らを癒す力=自然治癒力がある」ことを重要視したことです。

60年、70年代にはカウンターカルチャー運動が様々な分野で広がり、その当時主流であった文化の流れに対抗する「非西洋、非キリスト教の文化・価値観」「自然回帰」の流れが全米に広がりました。医療、健康の分野でも「非西洋、非近代西洋医学」等への関心や健康・自然指向が高まりました。
その後、老齢化問題、それにともなう医療費の増大、ストレス過多の生活は現代西洋医学以外への療法への関心は一層高まり広く認知され、米国政府の政策と補填のある代替医療、補完医療が重視されました。
「身体と精神を分離しないで、調和的な平衡が保たれている状態を健康とする考え方」「自然回帰への意識」は広がり、人々の価値観、ライフスタイルまでもが変化していったのです。
米国で誕生したスパ・ムーブメントの根幹はこのホリスティックな(全人的な)健康観であるといえます。

このように「スパ誕生」以前に、人々の価値観そして医療、健康、美容をテーマにする様々な業界ですでに「スパ化」現象が進行していたといえます。ISPAの功績のひとつは、広く静かに潜行するこの現象をSpaという概念で明確にID化したこと、そして、それにより様々な業界で「スパ化」という再構築を活発化させたことです。
CURE(治療)すらHEAL(癒し)へ
米国で生まれたスパ・ムーブメントには3つの「目に見えない」エッセンスがあります。
1つめは「健康の捉え方」。
2つめは「ホスピタリティー」。
そして3つめは「インテグレーション=(個々をひとつにして統合する)」です。
SPAの健康の捉え方は、「心・体・気=意識(Spirit)がバランスよく調和していること」です。
単に「病気ではない状態」ではなく、「生きがいを感じ、気が充実した幸福な状態」を健康と捉えています。
この考え方は、伝統的な古代医学(中国、インド、アラブ、ギリシャ等)に共通する基本的な姿勢です。
病を治すのは人が本来持つ力(自然治癒力)であり、治療とは個々の自然治癒力を高めるための支援行為と考えられていました。
さまざまな担当を渡り歩く現代の大型病院とはまったく異なり、古代の医者は患者と一対一の人間関係を徹頭徹尾貫き通したのです。
SPAが伝統的な療法や自然療法のみを用いるのは、この古代医療の「姿勢」を最も重要な根幹としているからです。
「ホスピタリティー」「インテグレーション」も「人=個」を尊重し、様々な療法を融合させ最もふさわしい方法と情報をゲスト一人ひとりに提供し支援するためのキーワードです。

クアハウス、テルメに代表される西欧の伝統的なスパ文化とは異なり、今日のスパの多くが、「癒し」の第1段階であるリラクセーション、つまり「癒される」を目的としたプログラム(主にマッサージを主とするタッチ、ボディワーク)を重要視してきましたが、 現在では、「癒し」の第2段階である「気づき(Awakeness)」、さらに「癒す」ことを目的とするプログラムが注目されるようになってきています。

※ISPAの2004年の報告書(ISPA 2004 SPA INDUSTRY STUDY)によれば、今後もっとも伸びるプログラムとして「ヨーガ」「心・身体・霊性の調和を目的としたプログラム(Mind・Body・Spirit Program)」を挙げている。

そして、今日のスパ・ムーブメントを敢えて簡潔に言うと、「(マインド・ボディー・スピリットが調和した)健康なライフスタイルの獲得を目的とした利用者を支援する、水をはじめとした自然の力を利用にした各種の伝統的な療法、自然療法を総合的に提供する施設」と言うことができると思います。
スパの定義
スパの定義に関する参考資料として、International Spa Association(ISPA)が定めるスパの定義をご紹介します。

■1991年制定 スパの定義
the spa experience as "your time to relax, reflect, revitalize and rejoice".
「スパ体験」を通じ、スパを「リラックス、リフレクト、リバイタライズ、リジョイス(安らぎ、気づき、再生、至福)の時」

■2003年改正版(※1991年の定義があまりにも抽象的との指摘があり改正)
Spas are entities devoted to enhancing overall well-being through a variety of professional services that encourage the renewal of mind, body and spirit.
「スパは、心、身体、霊性の回復を促進する様々なプロフェッショナルなサービスを通じてトータルな健康を促進するために寄与する」

■「10 spa domains」
スパをめぐるテーマ:10の領域(※1991年以来改正されていない)

今日のスパ・ムーブメントの基本概念をテーマ別に記したもので、スパを理解する第一歩として(多分に抽象的ですが)一読をお薦めします。

Waters: The internal and external use of water in its many forms.
水:水は体の内と外で、さまざまな形で利用される。

Nourishment: What we feed ourselves: food, herbals, supplements and medicines.
滋養:食物・ハーブ・サプリメント・医薬品など、私たちが自分の体に与えるものが「滋養」である。

Movement: Vitality and energy through movement, exercise, stretching and fitness.
運動:エクササイス・ストレッチ・フィットネスなどの運動をとおして活力とエネルギーが生まれる。

Touch: Connectivity and communication embraced through touch, massage and bodywork.
タッチ:マッサージやボディーワークなどのタッチを通して一体感とコミュニケーションが受容される。

Integration: The personal and social relationship between mind, body, spirit and environment.
統合=インテグレーション:精神・肉体・霊性が、個人的・社会的なレベルで環境と調和し連携している状態を「インテグレーション」(統合)と呼ぶ。

Aesthetics: Our concept of beauty and how botanical agents relate to the biochemical components of the body.
エステ(美):私たちの美に関する概念および植物系薬効成分が肉体の生化学組成とどのように関連しているのかについての理解が「エステ(美)」である。

Environment: Location, placement, weather patterns, water constitution, natural agents and social responsibility.
環境:地理的立地条件、気象・水利条件、自然に内在するエネルギー、そしてその土地における社会的責任のすべてを含めたものが「環境」である。

Cultural Expression: The spiritual belief systems, the value of art and the scientific and political view of the time.
文化の表現:心についての考え方、芸術に対する価値観、そして科学や政治についてのその時代の観点が、「文化の表現」である。

Social Contribution: Commerce, volunteer efforts, and intention as they relate to well-being.
社会的寄与:人々の福祉に関連する商業活動およびボランティア活動と、そこで意図されているものを「社会的寄与」と呼ぶ。

Time, Space Rhythms: The perception of space and time and its relationship to natural cycles and rhythms.
タイム・スペース・リズム:時間や空間に対する感じ方と、自然のサイクルやリズムとの間に関連性がある、というテーマが「タイム・スペース・リズム」である。

※出典:International Spa Association(ISPA)//www.experienceispa.com/
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